中小企業の経営において、メインバンクとの関係は、業績そのものと同じくらい重要です。いざ資金が必要になったとき、すぐに相談できる銀行があるかどうかで、会社の選択肢は大きく変わります。
しかし、「銀行とは、お金を借りるときだけ付き合う相手」と考えている経営者は少なくありません。実は、この姿勢こそが、いざというときに融資を受けにくくする原因になっています。本記事では、中小企業がメインバンクと良好な関係を築くための考え方と、具体的なポイントを解説します。
そもそも「メインバンク」とは何か
メインバンクとは、複数ある取引銀行の中で、最も取引が深く、中心的な役割を担う銀行のことです。明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、融資残高が最も多い、預金や決済のメイン口座を置いている、経営の相談に最初に乗ってもらえる、といった銀行がメインバンクにあたります。
中小企業の場合、地方銀行や信用金庫、信用組合がメインバンクになることが多いでしょう。規模や地域によっては、メガバンクが中心となる会社もあります。重要なのは、銀行の規模よりも、自社のことをよく理解し、長く付き合ってくれる関係を築けるかどうかです。
なぜ、平時からの関係づくりが大切なのか
銀行が融資を判断するとき、見ているのは決算書の数字だけではありません。その会社の事業内容、経営者の人柄、将来性、そして「どれだけ信頼できる相手か」という総合的な評価で判断しています。
この信頼は、一朝一夕には築けません。普段はまったく連絡を取らず、資金が必要になったときだけ突然「貸してほしい」とお願いする会社と、日頃から事業の状況を共有し、良いときも悪いときも正直に話してくれる会社とでは、銀行の受け止め方はまったく違います。
私は、銀行との関係づくりは、マラソンに似ていると思っています。ゴール(融資が必要な場面)の直前に慌てて走り出しても間に合いません。日々の地道な積み重ねがあってこそ、いざというときに力を発揮できるのです。
良好な関係を築く5つのポイント
具体的に、メインバンクと良い関係を築くために、経営者が意識したいポイントを5つ挙げます。
1. 業績を定期的に報告する
決算が出たときだけでなく、できれば四半期や半期ごとに、業績の状況を銀行に報告することをおすすめします。試算表や資金繰り表を持参し、「今、会社がどういう状況か」を自分の言葉で伝える。これだけで、銀行の安心感は大きく変わります。報告を欠かさない会社は、それだけで「管理がしっかりしている会社」と評価されます。資金繰り表の作り方については、資金繰り表の作り方と活用法|中小企業の「黒字倒産」を防ぐもあわせてご覧ください。
2. 悪い情報こそ、早めに正直に伝える
業績が悪化したとき、それを隠したくなる気持ちは分かります。しかし、銀行が最も嫌うのは「後から悪い情報が出てくること」です。売上が落ちそう、資金繰りが厳しくなりそうといった情報は、早めに正直に相談したほうが、銀行も対策を一緒に考えてくれます。正直さは、長期的な信頼の土台になります。
3. 経営者自身が顔を出す
融資や報告の場面で、経理担当者や税理士に任せきりにせず、経営者自身が銀行の担当者と顔を合わせることが大切です。銀行は、最終的には「この経営者は信頼できるか」を見ています。経営者の想いや事業への熱意は、本人の言葉でしか伝わりません。
4. 複数行と付き合いつつ、メインを大切にする
リスク分散の観点から、取引銀行を1行に絞らず、複数行と付き合っておくことは大切です。ただし、すべてを薄く広く付き合うのではなく、中心となるメインバンクを定め、そことの関係を特に深めておくとよいでしょう。メインバンクがしっかりしていれば、他行も「あの銀行がメインなら」と安心して追随しやすくなります。
5. 借りられるときに、借りておく
これは意外に思われるかもしれませんが、資金に余裕があるときこそ、銀行との取引実績を作っておく好機です。必要に迫られてから借りるより、余裕のあるときに借りて、きちんと返済実績を積むほうが、銀行からの信頼は高まります。返済実績は、何よりの信用情報になります。
銀行は「敵」ではなく「パートナー」
中小企業の経営者の中には、銀行を「お金を貸してくれるかどうかを判断する、少し怖い相手」と捉えている方もいます。しかし、本来、銀行は会社の成長を一緒に支えてくれるパートナーです。
良い関係が築けていれば、融資だけでなく、取引先の紹介、補助金の情報、経営課題の相談など、さまざまな面で力になってくれます。銀行を味方につけることは、中小企業にとって大きな経営資源なのです。実際の融資交渉については、資金調達で銀行交渉を有利に進める5つのポイント|中小企業の経営者向けでも詳しく解説しています。
おわりに
メインバンクとの関係づくりに、特別な裏技はありません。業績を正直に報告し、良いときも悪いときも誠実に向き合い、日頃から信頼を積み重ねる。地道なことの積み重ねが、いざというときに会社を支えてくれます。
とはいえ、銀行とどう付き合えばよいか、何をどう報告すればよいか、自社だけで判断するのは難しいと感じる経営者も多いはずです。私たちEXビジネス・コンサルティングでは、社外CFOとして、銀行との関係づくりや融資交渉のサポートも行っています。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。