「では、これでいきましょう」。
会議の終わり、方針が決まって、全員がうなずく。良い会議だった、と誰もが思う。ところが、一週間後。何も進んでいない。前回と同じ話を、また繰り返している。
そんな場面に、心当たりのある経営者の方は、少なくないと思います。私自身も、何度も経験してきました。
決めたはずなのに、動かない。その理由は、たいてい一つです。打ち手が、「誰が・いつまでに・何を」まで落ちていないのです。
「やろう」だけでは、誰も動かない
「新規開拓を強化しよう」。「業務を効率化しよう」。会議では、こうした方針が、よく決まります。
間違ってはいません。方向としては正しい。けれど、これだけでは、現場は一歩も動きません。なぜなら、「誰が」やるのか、「いつまでに」やるのか、「何を」やるのかが、何も決まっていないからです。
「やろう」という言葉は、全員のものであり、同時に、誰のものでもない。
みんなの仕事は、たいてい、誰の仕事にもなりません。「そのうち、誰かがやるだろう」。そう思っているうちに、時間だけが過ぎていくのです。
三つを、その場で埋める
では、どうするか。答えは、拍子抜けするほど単純です。
決めた打ち手を、その場で「誰が・いつまでに・何を」の三つまで埋める。それだけです。
「新規開拓を強化しよう」なら、こう落とします。「担当を一人決めて、今月末までに、特定のお客様にヒアリングの連絡を入れる」。ここまで具体的にして、はじめて、打ち手は動き出す形になります。
誰が、が抜けると、誰もやりません。いつまでに、が抜けると、いつまでもやりません。何を、が抜けると、何をすればいいか分かりません。この三つは、どれ一つ欠けても、実行につながらないのです。
以前、『「強みを活かす」という総論が、意思決定を止める』という記事でも書きましたが、正しい総論を、具体の一手まで割っていく。その最後の仕上げが、この三つを埋める作業なのだと思います。
そもそも、なぜ分析や方針が行動に変わらないのか。以前、『分析が行動に変わらない、3つの構造的な理由』という記事でも触れましたが、その構造的な原因の一つが、まさにこの「三つが埋まっていない」状態なのです。そして、埋めるべき「何を」を見つけるには、集めた材料を組み合わせる作業が欠かせません。『分析は材料にすぎない。打ち手は「掛け合わせ」で生まれる』という記事に書いたとおり、打ち手そのものは掛け合わせから生まれ、その打ち手を、この三つで実行に落とし込む。そういう流れだと、私は考えています。
私も、三つを埋められずに苦しんだ
偉そうに書いていますが、私自身、この三つで苦労してきた一人です。
起業したばかりの頃。経理も、財務も、法務も、営業も、すべて一人で抱えていました。やるべきことは、山ほどある。頭の中は、いつも「あれもこれも」で、いっぱいでした。
けれど、「あれもこれも」と思っている間は、不思議と、何も進みませんでした。私を動かしてくれたのは、「今日は、この書類を、夕方までに仕上げる」という、たった一つの具体でした。
誰が、は自分しかいない。何を、いつまでに。この二つを決めた瞬間、宙に浮いていたやるべきことが、はじめて手を動かせる仕事に変わったのです。あの感覚は、今も忘れません。
三つを埋めると、振り返りができる
「誰が・いつまでに・何を」を決める効用は、実行だけではありません。
この三つが決まっていると、あとで振り返りができます。「あの件、どうなりましたか」と聞ける。できていれば、次へ進む。できていなければ、なぜできなかったのかを、一緒に考えられる。
逆に、三つが曖昧なままだと、振り返りようがありません。「なんとなく、やっている」では、進んだのか止まったのかすら、分からないのです。
決めることと、振り返ること。この二つは、三つを埋めることで、はじめてつながります。地味ですが、これが実行を続けるための、土台になるのだと思っています。
おわりに
「誰が・いつまでに・何を」。たった三つの問いです。難しいことは、何もありません。
けれど、この三つを埋めるかどうかで、決めた打ち手が動き出すか、宙に浮いたまま消えていくかが、はっきりと分かれます。私は、そう感じています。
方針は立派なのに、なぜか現場が動かない。もし、そんな手応えのなさを感じておられるなら、打ち手が三つまで落ちているか、一度確かめてみてください。抜けているものが、きっと見つかるはずです。
決めたことを、確実に実行へつなげる。その仕組みづくりや、振り返りの伴走は、私が力になれる場面だと思っています。方針が行動に変わらないとお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場目線で、一緒に手を動かしていきたいと思っています。