「分析はしたんです。でも、そこから、どう動けばいいのか分からなくて」。
経営者の方から、こうしたご相談を受けることがあります。現状も調べた。数字も見た。課題も整理した。それなのに、「では、何をするか」の一手が出てこない。手が止まってしまう。
その気持ちは、痛いほど分かります。私自身も、経営者として同じ壁の前に立ってきたからです。
けれど、そういうとき、私はいつもこうお伝えしています。分析は、材料にすぎません、と。
分析だけでは、答えは出てこない
分析というのは、料理でいえば、食材をそろえる作業です。
いい食材が並んでいても、それだけでは料理になりません。どう組み合わせ、どう火を入れるか。そこではじめて、一皿ができあがります。
経営も、これと同じだと思っています。現状を調べる。数字を見る。強みや弱みを洗い出す。これらは、すべて大切な「材料集め」です。けれど、材料をきれいに並べただけでは、打ち手にはなりません。
分析の量を増やせば、いつか答えが出てくる。そう思ってしまいがちです。でも、材料をいくら増やしても、それを組み合わせなければ、料理は生まれないのです。
打ち手は、材料の「掛け合わせ」から生まれる
では、材料をどうすれば打ち手になるのか。
私の実感では、打ち手は、一つの分析からは生まれません。いくつかの材料を掛け合わせたとき、はじめて姿を現します。
たとえば、「うちの強みは、細かい要望に応えられること」という材料が一つ。「最近、大口より小口の問い合わせが増えている」という材料がもう一つ。この二つを掛け合わせると、「小口で、細かい要望の多いお客様に、狙いを絞る」という打ち手が見えてきます。
強みだけを見ていても、市場の変化だけを見ていても、この一手は出てきません。二つが交わったところに、はじめて打ち手が立ち上がるのです。
打ち手は、材料の交差点に宿る。
これは、私が長く現場を見てきて、たどり着いた実感です。
私自身が、掛け合わせで歩いてきた
思えば、私のキャリアそのものが、掛け合わせの連続でした。
為替仲介で市場と向き合った経験。生命保険で人と向き合った経験。IT業界でシステムを提案した経験。そして、自分で会社を起こし、経理も財務も法務も、一人でこなさざるを得なかった経験。
一つひとつは、まったく別の世界の話です。けれど、これらを掛け合わせたとき、「財務も、営業も、ITも分かる伴走者」という、今の私の立ち位置が生まれました。
どれか一つだけでは、たどり着けなかった場所です。バラバラに見えた経験が、掛け合わさって、一つの打ち手になった。私自身が、その生きた実例なのだと思っています。
掛け合わせるには、材料を並べて眺めること
では、どうすれば掛け合わせが上手くなるのか。特別な才能が要るわけではありません。
まず、材料を、目に見える形で並べてみることです。頭の中だけで考えていると、材料同士がなかなか出会いません。紙でも、ホワイトボードでも構いません。強み、弱み、市場の変化、お客様の声。それらを書き出し、横に並べて眺めるのです。
そして、「これと、これを組み合わせたら、どうなるか」と問うてみる。一見、関係のなさそうな材料ほど、意外な打ち手を生むことがあります。
この作業は、一人でやると、どうしても発想が偏ります。見たいように材料を組み合わせてしまう。だからこそ、第三者と一緒に眺めることを、私はお勧めしています。以前、『分析が行動に変わらない、3つの構造的な理由』という記事でも書きましたが、分析を行動に変えるには、一人で抱え込まない工夫が要るのです。
おわりに
分析は、大切です。けれど、分析は、あくまで材料集めです。
集めた材料を並べ、掛け合わせ、「だから、うちはこうする」という一皿に仕立てる。そこまでやって、はじめて分析は経営の役に立ちます。
分析が得意なのに、なぜか手が動かない。もし、そんな状態にあるとしたら、材料は十分そろっているのかもしれません。足りないのは、それを掛け合わせる、ほんの少しの視点だけ。そういうことが、少なくないのです。
材料をどう掛け合わせ、どんな一手に変えるか。その組み合わせを一緒に考えることこそ、私が最も力になれる場面だと、私は思っています。
集めた分析が、なかなか打ち手にならない。そんなお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。材料を一緒に並べ、掛け合わせるところから、現場目線でお手伝いしたいと思っています。