弱みを直視できるかどうかは、それ自体が経営者の力量である

「うちの弱みは、なんだと思われますか」。

経営者の方に、私からこう尋ねることがあります。すると、多くの方が、少し言葉に詰まります。強みについては、時間をかければ何かしら出てくる。けれど、弱みとなると、口が重くなる。目をそらしたくなる。その気持ちは、経営者である私自身にも、痛いほどよく分かります。

弱みを見つめるのは、しんどい作業です。自分の会社の、いちばん見たくない部分に、正面から光を当てることになるのですから。

けれど、この「見たくないものを、見られるかどうか」に、経営者の力量が、思いのほか表れるのだと、私は感じています。今回は、そのことについてお話ししたいと思います。

弱みから目をそらすのは、人として自然なこと

まず申し上げておきたいのは、弱みを直視できないのは、決してその方が怠慢だからではない、ということです。

自分の弱点を認めるのは、誰にとってもつらいものです。まして、自らの判断で会社を率いてきた経営者にとって、「ここが足りていない」と認めることは、これまでの歩みを否定されるような、そんな感覚を伴います。だから、無意識のうちに目をそらしてしまう。これは、人として、ごく自然な反応です。

けれど、自然な反応であることと、それが経営にとって良いかどうかは、別の話です。弱みは、目をそらしても消えてはくれません。それどころか、見て見ぬふりをしている間に、静かに大きくなっていきます。

弱みを認められる人ほど、実は強い

長く経営者の方々と接してきて、一つ、はっきりと感じることがあります。

自社の弱みを、淡々と言葉にできる経営者ほど、経営が安定しているということです。

「うちは営業の仕組みが弱い」「財務を見られる人材がいない」「後継者が育っていない」。こうした耳の痛いことを、隠さず口にできる方は、たいてい、その弱みへの手立ても、冷静に考えておられます。逆に、弱みを問われて「特にありません」と即答される場合、かえって心配になることがあります。見えていないのか、見たくないのか。いずれにせよ、そこに手は打てないからです。

弱みを認める力は、卑下でも自信のなさでもありません。むしろ、自分と会社を客観的に見られる強さの表れなのだと、私は思っています。

私自身、見えていなかった弱みがありました

偉そうに書いていますが、私自身、自分の弱みから目をそらしていた時期があります。

起業したての頃、私は経理も財務も法務も、たった一人で抱えていました。営業には自信がありました。だからこそ、「売上さえ立てば、なんとかなる」と、どこかで思っていた気がします。けれど、現実は違いました。資金繰りに追われ、目の前の支払いに苦しむ日々。あのとき私が直視できていなかった弱みは、まさに「財務」でした。

営業という強みに寄りかかるあまり、足元の弱みを、見て見ぬふりをしていた。今振り返れば、そう思います。この苦い経験があったからこそ、私は財務を学び直し、今、社外CFOとして経営者の方に伴走しています。弱みと向き合ったことが、結果として、今の仕事につながっているのです。

弱みを直視した経験は、いつか必ず、自分の血肉になります。

弱みは、一人で見つめなくていい

とはいえ、自分の弱みを、自分だけで直視するのは、本当に難しいことです。

人は、自分のことになると、どうしても目が曇ります。都合の悪いことは、無意識に小さく見積もってしまう。だからこそ、第三者の目が役に立ちます。以前、『現状把握なき戦略は、なぜ必ず的を外すのか』という記事でも書きましたが、財務の数字は、経営者が見たくない弱みを、感情を交えず正直に映し出してくれます。数字は、優しくはありませんが、嘘もつきません。

信頼できる第三者と一緒に、数字と現場の両面から自社を見つめ直す。すると、一人では認めきれなかった弱みも、不思議と冷静に受け止められるようになります。経営者の孤独に、そっと伴走する人がいる。それだけで、弱みと向き合う勇気は、ずいぶん湧いてくるものだと感じています。

おわりに

強みを語ることも大切です。けれど、弱みを直視できるかどうかは、それ以上に、その経営者の力量を映し出すのだと、私は感じています。

弱みを認めるのは、負けを認めることではありません。むしろ、そこからしか、本当の手は打てない。見たくないものを見る勇気を持てる人こそ、会社を次の段階へ進めていける。さまざまな経営者の方と接してきて、そう確信しています。

弱みは、恥ずかしいものでも、隠すものでもありません。直視し、受け止め、一つずつ手を打っていく。その地道な繰り返しの先に、強い会社が育っていくのだと、私は思っています。

当社では、社外CFOとして財務の数字から、そして営業・DXの視点から、経営者の皆さまが自社の弱みと冷静に向き合い、次の一手を描くお手伝いを、現場目線で行っています。一人で抱え込まず、誰かと一緒に自社を見つめ直したいとお考えのときは、ぜひお気軽にご相談ください。

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