「AIエージェント、って言葉、最近よく聞くんですけど、正直、よく分からなくて」。
先日、ある経営者の方から、そんな話がありました。ニュースでも、雑誌でも、この言葉を見かける。周りも、なんだか使い始めているらしい。けれど、自社にとって何なのかが、いまひとつ掴めない。そういう戸惑いです。
その気持ちは、よく分かります。新しい言葉が出てくるたびに、乗り遅れてはいけないような気になる。けれど、中身が分からないまま焦っても、いいことはありません。今日は、この「AIエージェント」について、できるだけ地に足のついた形で、お話ししたいと思います。
生成AIとの、いちばん大きな違い
まず、これまでの生成AIと、何が違うのか。ここが、いちばんの入り口です。
ChatGPTに代表される生成AIは、こちらが質問すると、答えを返してくれます。文章を書く。要約する。アイデアを出す。とても便利です。ただ、あくまで「聞かれたことに答える」のが役割でした。一問一答、と言ってもいいかもしれません。
AIエージェントは、ここが少し違います。目的を伝えると、そのために何をすべきかを自分で考え、複数の作業を、順番にこなしていく。そういう仕組みです。
生成AIが「答える」なら、AIエージェントは「動く」。
たとえば、「この問い合わせに対応しておいて」と伝えると、内容を読み取り、過去のやりとりを調べ、返信の文面まで用意する。人が一つひとつ指示を出さなくても、目的に向かって、自分で段取りを組んでくれる。そこが、これまでとの大きな違いなのです。
中小企業にとって、どこが嬉しいのか
では、これが中小企業にとって、どういう意味を持つのか。
私が思うに、いちばんの価値は、人手の足りなさを、少しだけ埋めてくれるところにあります。
中小企業では、一人が何役もこなしているのが、当たり前です。私自身、起業したばかりの頃は、経理も、財務も、法務も、営業も、すべて一人で抱えていました。やるべきことは山ほどあるのに、手は二本しかない。あの、時間に追われ続ける感覚は、今でも忘れられません。
問い合わせへの一次対応。社内にある資料の整理や要約。定型的な事務作業。こうした「大事だけれど、時間ばかり取られる仕事」を、AIエージェントに任せられる場面が、少しずつ増えてきています。空いた時間を、人にしかできない仕事に回す。そこに、中小企業ならではの意味があると、私は感じています。
ただし、丸投げでは、うまくいかない
とはいえ、注意しておきたいことも、あります。
AIエージェントは、万能ではありません。目的を自分で分解して動く、とはいえ、任せる側が「何を、どこまで任せるのか」を分かっていなければ、期待した働きはしてくれません。
これは、人を採用するのと、少し似ています。「いい感じにやっておいて」では、新人は動けません。何を、どういう基準で、どこまでやってほしいのか。そこを言葉にして初めて、任せられる。AIエージェントも、同じなのです。
以前、『「次の一手」を、誰が・いつまでに・何をするかまで落とす』という記事でも書きましたが、仕事を任せるには、具体まで落とす作業が欠かせません。相手が人であっても、AIであっても、この一手間を省くと、結局は動かないのです。
まずは、小さく試すこと
では、どこから始めればいいのか。私がお勧めしているのは、いきなり大きく入れないことです。
会社全体を一気に変えようとすると、たいてい、途中で息切れします。そうではなく、まず一つの業務。それも、失敗しても大きな痛手にならない、小さな作業から試す。うまくいけば広げる。合わなければやめる。それくらいの気軽さで、いいのだと思います。
大切なのは、完璧に理解してから始めることではありません。小さく触ってみて、自社に合うかどうかを、自分の目で確かめること。新しい道具は、使ってみて初めて、良し悪しが分かるものだからです。
おわりに
AIエージェント。新しい言葉で、身構えてしまうかもしれません。けれど、その本質は、そう複雑ではありません。目的を伝えると、そのために自分で段取りを組んで動いてくれる。そういう、少し賢くなった道具です。
流行っているから使う、のではありません。自社のどの仕事が楽になるのか。そこを見極めて、小さく試していく。地味なようですが、それが、遠回りに見えて、いちばん確かな進め方だと、私は思っています。
自社の業務のどこにAIが活きるのか。何から手をつければいいのか。一人で考えていると、なかなか判断がつかないものです。もしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場目線で、一緒に考えていきたいと思っています。