「このままだと、うちみたいな会社は、取り残されるんでしょうか」。
AIの話題が続くなか、そんな不安を口にされる経営者の方が、増えてきました。世の中の変化は速い。大企業はどんどん先へ行く。自分だけが、置いていかれるような気がする。その焦りは、痛いほど分かります。
けれど、私は、こうお伝えしています。慌てて追いかける必要は、ありません、と。今日は、AI時代に中小企業が生き残るために、本当に大切なことは何かを、お話ししたいと思います。
変化そのものは、今に始まったことではない
まず、少しだけ視野を広げてみたいと思います。
環境が大きく変わる。それは、AIが初めてもたらしたことではありません。私は為替仲介の世界にいた頃、相場という、自分ではどうにもできない大きな変化の中で、仕事をしていました。生命保険の世界も、IT提案の世界も、常に何かが変わり続けていました。
変わらないものなど、もともと、ありません。
だとすれば、AIも、これまで何度も経験してきた変化の、新しい一つにすぎない。そう捉えると、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。大切なのは、変化に驚くことではなく、変化とどう付き合うかを、知っていることなのです。
中小企業には、大企業にない強みがある
「大企業にかなわない」。そう思い込んでおられる方が、少なくありません。けれど、変化の局面では、むしろ中小企業のほうが有利な面があります。
それは、決めるのが速い、ということです。
大企業は、動くのに時間がかかります。会議を重ね、稟議を通し、ようやく一歩を踏み出す。その間に、中小企業は、経営者の判断ひとつで、すぐに試すことができます。合わなければ、すぐにやめられます。この身軽さは、変化の速い時代には、大きな武器です。
お客様との距離が近いことも、強みです。現場の変化を、肌で感じ取れる。何が求められ始めているかを、直接つかめる。規模の小ささが生む、この近さこそ、中小企業の底力だと、私は思っています。
AIに任せるほど、人の価値は際立つ
AIが仕事を奪う。そんな言葉を、よく耳にします。たしかに、定型的な作業は、これから機械に置き換わっていくでしょう。
けれど、私は、少し違う見方をしています。AIが手のかかる作業を引き受けてくれるほど、人にしかできない仕事の価値は、かえって際立っていく、と。
お客様の迷いに寄り添う。言葉にならない不安を、汲み取る。信頼を、時間をかけて積み上げる。こうしたことは、どれだけ技術が進んでも、機械には難しい領域です。そして、これこそが、中小企業がずっと大事にしてきたことでもあります。
私自身、30年以上、営業や経営の現場で、人と人との信頼を積み重ねることを、何より大切にしてきました。その価値は、AIの時代になっても、少しも揺らがない。むしろ、これから、いっそう重みを増していくのだと思っています。
足元を固めることが、いちばんの備え
では、具体的に何をすればいいのか。逆説的に聞こえるかもしれませんが、AIを追いかけることより先に、やるべきことがあります。
それは、自社の足元を、きちんと固めることです。
自社の強みは何か。誰に、何を届けている会社なのか。どこに弱みがあるのか。ここが曖昧なままでは、新しい道具を手にしても、使いこなせません。土台がぐらついていれば、その上に何を積んでも、崩れてしまうからです。
以前、『自社を4つの窓で見る、という経営の基本動作』という記事でも書きましたが、強み・弱み・機会・脅威という四つの窓で自社を見渡すこと。この基本動作こそ、変化の時代を生き抜く、いちばんの備えになります。流行を追う前に、まず現在地を知る。順番を、間違えないことが大切です。
おわりに
AI時代に、中小企業が生き残る。そう聞くと、最新技術を必死に追いかけなければ、と思ってしまうかもしれません。けれど、本当に大切なのは、そこではないと、私は感じています。
変化を、特別なものとして恐れないこと。中小企業ならではの身軽さと近さを、強みとして活かすこと。人にしかできない仕事を、大事にし続けること。そして、自社の足元を、丁寧に固めること。この積み重ねの先にこそ、生き残る道はあるのだと、私は思っています。
変化にどう向き合えばいいのか。自社の何を守り、何を変えればいいのか。一人で抱えていると、答えの出にくい問いです。もしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場目線で、一緒に考えていきたいと思っています。