制度融資と日本政策金融公庫の違い|創業期はどちらを使うべきか

「公庫と制度融資、どっちがいいんでしょうか」。

創業前の方から、いちばんよく聞かれる質問のひとつです。ネットで調べれば、比較表はいくらでも出てきます。金利がどう、保証料がどう、審査期間がどう。それでも、こうして聞かれるということは、表を見ただけでは決められない何かが残っている、ということなのだと思います。

実際、この問いは「どちらが得か」だけでは答えが出ません。創業期の会社にとって、お金を借りるという行為は、単なる調達ではなく、これから先の付き合いの入り口でもあるからです。

今日は、そのことについてお話ししたいと思います。

そもそも、お金の出どころが違う

まず、いちばん基本的なところを整理しておきます。

日本政策金融公庫は、国が100%出資している金融機関です。窓口も、審査も、貸し出しも、公庫が直接行います。つまり、お金を出す相手は公庫そのものです。

一方の制度融資は、少し構造が複雑です。都道府県や市区町村といった自治体が制度をつくり、信用保証協会が保証を付け、実際に融資を実行するのは民間の金融機関。三者が関わる仕組みになっています。自治体によっては、利子や保証料の一部を補助してくれるところもあります。

ここが、意外と見落とされている点です。

制度融資は、銀行と付き合いを始める入り口でもある。

公庫から借りても、地元の信用金庫との関係は生まれません。けれど制度融資であれば、実行するのは民間の金融機関ですから、その日から取引先としての履歴が積み上がっていきます。創業期の一件目が、そのまま将来のメインバンクにつながることも、珍しくありません。

スピードで選ぶなら、公庫に分がある

とはいえ、創業期にいちばん切実なのは、時間です。

公庫の創業融資は、申込から実行まで、おおむね一か月前後を見ておけばよい、というのが一般的な感覚です。窓口が一つですから、話が早い。担当者と直接やり取りできるのも大きい。

制度融資は、自治体・保証協会・金融機関と関係者が多いぶん、どうしても時間がかかります。自治体の斡旋窓口を通す形式だと、二か月、三か月と見ておいたほうが安全な場合もあります。

「開業日が決まっている」「物件の契約が迫っている」。そういう状況で、時間の読めない選択肢を選ぶのは、あまり得策とは言えません。

逆に、開業までまだ半年あるのなら、制度融資をじっくり進めながら、地元金融機関との関係をつくっていく。そういう組み立ても十分に成り立ちます。

コストの差は、思っているほど単純ではない

金利だけを並べれば、制度融資のほうが低く見えることがあります。自治体の利子補給が乗れば、なおさらです。

けれど、制度融資には信用保証協会の保証料がかかります。これが実質的なコストとして上乗せされる。自治体が保証料の一部を補助してくれるかどうかで、総額はかなり変わってきます。

公庫は保証料がありませんが、そのぶん金利は制度融資より高めに出ることもある。

要は、住んでいる場所と、その自治体の制度次第なのです。

全国一律の「正解」はありません。ご自身の自治体のホームページを一度見に行く。それだけで、答えの半分は出ます。地味な作業ですが、ここを飛ばして一般論で判断すると、案外もったいないことになります。

私自身、一人で全部やろうとして立ち止まりました

偉そうに書いていますが、私も起業したての頃、経理も財務も法務も、一人で抱え込んでいた時期がありました。

調べれば調べるほど、選択肢が増える。増えるほど、決められなくなる。あの、机の上に資料だけが積み上がっていく感覚は、今でもよく覚えています。

為替の仲介をしていた頃、私は「即レス」の世界にいました。一秒の遅れが信用を左右する現場です。そこで身についたのは、完璧な答えを待つより、まず動いて相手の反応を見る、という習慣でした。

資金調達も、実は似たところがあります。窓口に行って、担当者に聞いてみる。それだけで、比較表を十枚読むより早く輪郭が見えることがあります。

以前、『創業融資の審査に通るコツ|日本政策金融公庫を活用する方法』という記事でも書きましたが、審査で見られているのは、書類の完成度そのものよりも、その数字を経営者が自分の言葉で説明できるかどうかです。これは、公庫でも制度融資でも変わりません。

両方使う、という選択肢もある

あまり知られていませんが、公庫と制度融資は、併用できます。

それぞれ別の枠組みですから、片方を使ったからもう片方が使えない、ということはありません。必要額が大きい場合、両方に申し込んで組み合わせる、というのは現実的な進め方です。

ただし、注意点があります。両方に同じ事業計画を出すのですから、内容に矛盾があってはいけない。数字も、言っていることも、揃えておく必要があります。

この点については、以前『融資・投資で通る事業計画書の作り方|創業期に押さえるべき6つの要素』でも触れました。結局、どちらを選ぶにしても、土台になるのは計画書です。

おわりに

制度融資と公庫。どちらが正しいという話ではありません。

時間がないなら公庫、地元との関係を早くつくりたいなら制度融資、必要額が大きいなら両方。それくらいの、ざっくりした指針でまず動いてみる。動いてから、修正すればいい。

大事なのは、比較表の前で止まってしまわないことだと、私は思っています。

一人で考えていると、どうしても選べない状態が続いてしまうものです。もしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場目線で、一緒に考えていきたいと思っています。

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