「うちの会社のこと、いちばん分かっているのは、私です」。
経営者の方が、そうおっしゃることがあります。もちろん、その通りだと思います。誰よりも長く、深く、会社と向き合ってきたのですから。
けれど、いちばん近くにいるからこそ、見えなくなるものもあります。毎日見ている景色は、かえって、全体像がつかみにくい。私自身、経営者として、そう感じることが何度もありました。
自社を、決まった窓から順に見渡す。それだけで、見えていなかったものが、見えてきます。
4つの窓、という見方
自社を見るとき、私がお勧めしているのは、四つの窓から順に眺めることです。
一つ目は、強みの窓。二つ目は、弱みの窓。三つ目は、機会の窓。そして四つ目が、脅威の窓です。内側を映す二つの窓と、外側を映す二つの窓。この四つで、会社をぐるりと見渡します。
難しい話ではありません。経営の世界では昔から使われてきた、基本的な考え方です。けれど、基本だからといって、侮れません。むしろ、基本ほど、きちんとできている会社は少ないのです。
この四つの窓を、一つずつ、丁寧に見ていきましょう。
内側を映す、強みと弱みの窓
強みと弱みは、会社の内側を映す窓です。
ただ、この二つは、自分では意外と見えません。強みは、当たり前になりすぎて気づかない。弱みは、目をそらしたくて見ない。どちらも、正直に向き合うのが難しい窓です。
以前、『「強み」を定義できない経営者が、価格競争に沈む理由』という記事でも書きましたが、自社の強みを言葉にできないと、価格でしか勝負できなくなります。強みの窓は、きれいに拭いておかないと、いざというとき役に立たないのです。
弱みの窓も、同じです。すべての弱みを直す必要はありませんが、致命的なものだけは、見つけて手を打たねばなりません。内側の二つの窓を、思い込みでなく、正直に覗くこと。これが、すべての出発点になります。
外側を映す、機会と脅威の窓
機会と脅威は、会社の外側、つまり外部環境を映す窓です。
景気、法改正、技術の進化、お客様の変化。自分では変えられない、大きな流れです。この流れを、追い風と読むか、向かい風と読むか。それによって、打ち手はまるで変わってきます。
以前、『同一の環境変化が、機会にも脅威にもなる構造』という記事でも書きましたが、同じ変化でも、会社によって機会にも脅威にもなります。だからこそ、外側の窓は、自社の立ち位置と重ねて見ることが大切なのです。
窓は、掛け合わせて見る
四つの窓を、別々に眺めるだけでは、まだ半分です。
本当に大事なのは、窓と窓を掛け合わせて見ること。強みと機会を重ねれば、攻めどころが見える。弱みと脅威を重ねれば、備えるべき危うさが見える。
打ち手は、窓の重なりから生まれる。
一つの窓だけを見ていても、次の一手は出てきません。内と外、良い面と悪い面。それらを掛け合わせたとき、はじめて「では、うちはどうするか」が見えてくるのです。
私自身、為替、保険、IT、そして起業と、いくつもの世界を渡ってきました。振り返れば、それぞれの経験という窓を掛け合わせたところに、今の自分の立ち位置があります。窓は、重ねてこそ意味を持つ。それは、会社を見るときも、同じだと感じています。
おわりに
強み、弱み、機会、脅威。この四つの窓から自社を見渡すことは、特別な経営手法ではありません。地味で、基本的な、いわば経営の基本動作です。
けれど、基本動作だからこそ、意識しないと、つい飛ばしてしまう。毎日忙しく走っていると、立ち止まって会社を見渡す時間は、なかなか取れないものです。
だからこそ、ときどきでいい。四つの窓の前に立ち、一つずつ、正直に覗いてみる。それだけで、見えていなかった現在地が、静かに浮かび上がってきます。その現在地こそが、次の一手の出発点になるのだと、私は思っています。
四つの窓で自社を見渡し、そこから打ち手を組み立てていく。その作業は、一人だと、どうしても思い込みが入りがちです。もしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。第三者の目線も交えながら、一緒に会社を見渡していきたいと思っています。