「この変化は、うちにとって追い風でしょうか、逆風でしょうか」。
経営者の方から、そう問われることがあります。法改正、新しい技術、消費者の好みの変化。世の中の大きな動きを前に、自社にとって、それが吉と出るのか凶と出るのか。多くの方が、そこを気にされます。
けれど、私はいつも、こう感じるのです。その問いには、あらかじめ決まった答えなど、ないのだ、と。
同じ変化が、ある会社には機会となり、別の会社には脅威となる。
変化そのものに、良いも悪いもありません。それを機会に変えるか、脅威にしてしまうかは、受け止める側しだいなのです。今回は、この構造について、お話ししたいと思います。
同じ波でも、乗る人と、飲まれる人がいる
大きな環境変化は、しばしば波にたとえられます。
同じ波が来ても、うまく乗る人がいれば、飲み込まれてしまう人もいます。波の大きさは、皆に等しい。違うのは、その波にどう向き合うか、という一点です。
たとえば、あるサービスが世の中に広まったとします。それによって仕事を奪われる会社があります。一方で、そのサービスを使う人が増えたことを商機と捉え、周辺の新しい需要をつかむ会社もあります。同じ一つの変化が、片方には脅威となり、もう片方には機会となる。現実には、こうしたことが、いたるところで起きています。
変化は、平等に降ってきます。けれど、その結果は、決して平等ではないのです。
私自身、業界の変化の中を渡ってきました
私は、為替、生命保険、ITと、複数の業界を渡り歩いてきました。
どの業界も、私がいた間に、大きな変化を経験しています。市場の環境が変わり、規制が変わり、扱う道具も変わっていきました。そのたびに、同じ変化を前にして、沈んでいく人と、むしろ勢いを増していく人の、両方を見てきました。
その違いは、能力の差というより、変化を「どう捉えたか」の差だったように思います。「厄介なことになった」と身構えた人は、守りに入り、動けなくなっていきました。逆に、「これは何かのチャンスかもしれない」と一歩踏み出した人は、変化の中に、新しい道を見つけていきました。
変化を恐れるか、変化に賭けるか。その最初の姿勢が、その後を大きく分けていたのです。
機会に変える人は、何が違うのか
では、同じ変化を機会に変えられる人は、何が違うのでしょうか。
一つは、自社の強みを、きちんと分かっていることです。変化が来たとき、「この変化は、うちの強みをより生かせる方向か」と問える。自社の軸が定まっているから、変化を、自分の土俵に引き寄せて考えられるのです。以前、『「強み」を定義できない経営者が、価格競争に沈む理由』という記事で強みの定義について書きましたが、強みが定まっていない会社は、変化に振り回されるだけになりがちです。
もう一つは、変化を「決めつけない」ことです。前回、『外部環境は変えられない。しかし読み違えは経営判断で防げる』という記事でも触れましたが、「これは脅威だ」と早々に決めつけた瞬間、機会を探す目が閉じてしまいます。同じ変化を、まず脅威と機会の両面から眺めてみる。この一手間が、道を分けます。
脅威を、機会に転じる視点
もっとも、すべての変化を、無理に前向きに捉えろ、と言いたいのではありません。
本当に脅威となる変化も、確かにあります。大切なのは、脅威を脅威として正しく認識したうえで、「その中に、機会の芽はないか」を探す姿勢です。
たとえば、ある変化で既存のやり方が通用しなくなったとします。それは脅威です。けれど、同じ変化に、多くの同業者もまた困っているはずです。ならば、いち早く新しいやり方に切り替えられれば、そこは逆に、抜け出すチャンスになります。脅威と機会は、多くの場合、同じ変化の裏表なのです。
脅威の裏側に、必ず機会が貼りついている。そう考えて変化を見る癖が、経営を強くするのだと、私は思っています。
おわりに
同じ環境変化が、ある会社を沈め、別の会社を押し上げる。その違いは、変化そのものではなく、変化をどう受け止め、どう動くかにあります。
変化に、良いも悪いも、はじめから決まってはいません。自社の強みを軸に、決めつけずに両面から眺め、脅威の裏にある機会を探す。この姿勢を持てるかどうかが、変化の時代を生き抜く分かれ目になります。
変化は、これからも次々にやってきます。それを恐れるより、そのたびに「これをどう生かせるか」と問い続ける。その積み重ねが、会社を、静かに、けれど確かに強くしていくのだと、私は信じています。
当社では、社外CFOとして、また営業・DXの視点から、経営者の皆さまが環境変化を冷静に読み解き、それを機会に変えていくための戦略づくりを、現場目線でお手伝いしています。目の前の変化に、どう向き合うべきか迷っておられるときは、ぜひお気軽にご相談ください。