「お金が足りなくなってきたので、そろそろ銀行に相談しようと思います」。
そんなご相談を、いただくことがあります。
気持ちは、痛いほど分かります。ですが、多くの場合、そのタイミングでは、もう遅いのです。資金が本当に苦しくなってから動き始めても、銀行は、なかなか首を縦に振ってくれません。
資金調達は、必要になってから始めるものではない。私は、そう考えています。
銀行は、困っている会社に貸したくない
少し、意地の悪い言い方になるかもしれません。
銀行が貸したいのは、「今すぐお金が要る、切羽詰まった会社」ではありません。むしろ、「今は余裕があるけれど、これから成長のために資金を使いたい会社」です。
これは、考えてみれば当たり前のことです。返ってくる見込みが高いからこそ、貸せる。追い込まれてから駆け込んでくる会社は、返済の見通しが立てにくい。だから、貸しにくいのです。
つまり、余裕があるうちに動いた会社ほど、有利な条件で借りられる。追い込まれてから動いた会社ほど、条件が厳しくなる。皮肉なようですが、これが現実です。
私自身、資金繰りで苦しんだ
偉そうなことを書いていますが、私自身、創業したころは、資金繰りに本当に苦労しました。
会社を立ち上げた当時、経理も、財務も、法務も、すべて一人で担っていました。営業で走り回りながら、夜になれば数字と向き合う。入ってくるお金と、出ていくお金のタイミングがずれるだけで、頭を抱える日々でした。
あのころ、もっと早く準備をしておけば、と何度も思いました。数字を整え、先を見通し、余裕のあるうちに手を打っておく。その大切さを、身をもって知ったのです。
だからこそ今、経営者の方が資金繰りの話をされると、当時の自分が重なります。あの苦しさを、少しでも減らせるお手伝いがしたい。そう思って、この仕事をしています。
「借りられる会社」になる、3つの準備
では、余裕のあるうちに、何を準備しておけばいいのか。難しいことではありません。
ひとつめは、自社の数字を、きちんと把握しておくことです。毎月、いくら売れて、いくら残っているのか。お金がどう動いているのか。ここがあいまいなままでは、銀行に説明のしようがありません。
ふたつめは、資金繰りの見通しを、先まで描いておくことです。これから数ヶ月、お金がどう動くのか。いつ、どれくらい足りなくなりそうなのか。先が読めていれば、苦しくなる前に、余裕をもって相談に行けます。
みっつめは、日ごろから、銀行と関係を築いておくことです。困ったときだけ顔を出すのではなく、良いときにも、自社の状況を伝えておく。この積み重ねが、いざというときの信用になります。
準備は、そのまま経営の力になる
ここまで書いてきた準備は、実は、借りるためだけのものではありません。
数字を把握し、先を見通し、関係を築く。これは、会社を健全に経営していくうえで、そのまま必要なことばかりです。
資金調達のための準備を進めるうちに、自社の足元が見えてくる。どこに無駄があり、どこに伸びしろがあるのか。その気づきが、経営そのものを、少しずつ強くしていきます。
以前、『資金繰りの弱点は、隠すより「伝え方」で信用に変える』という記事でも書きましたが、弱みは隠すより、正直に伝え方を工夫するほうが、かえって信用につながります。そのためにも、日ごろの準備が土台になるのです。
おわりに
資金調達は、必要に迫られてから始めるものではありません。
数字を整え、先を見通し、余裕のあるうちに動いておく。その地道な準備をしてきた会社だけが、いざというとき、「借りられる会社」でいられます。
華々しい話では、ありません。ですが、こうした下ごしらえこそが、会社を守る、いちばん確かな備えになる。創業期に資金繰りで苦しんだ自分の経験からも、そう強く感じています。
準備は、早いほどいい。追い込まれる前に、一緒に足元を固めていく。それが、経営者の孤独に寄り添うということだと、私は思っています。
資金調達や資金繰り、財務戦略についてお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。