「もっと売上を伸ばさないと」。
経営者の方から、よく聞く言葉です。
もちろん、売上は大切です。ですが、売上ばかりを追いかけて、肝心の「利益」が置き去りになっている会社を、私は数多く見てきました。
売上を大きく増やすより、粗利率をほんの少し上げるほうが、実は近道なことがあります。
「たかが1%」が、会社を変える
粗利率とは、売上のうち、いくら手元に残るかを示す割合です。
この数字を、1%上げる。数字だけ見れば、わずかな差に思えるかもしれません。ですが、その1%は、売上のすべてにかかってきます。
たとえば、多くの取引で少しずつ利益が積み上がる会社ほど、この1%の効きは大きくなります。売上を何割も伸ばすのは大変ですが、粗利率を1%改善するのは、やり方次第で手が届く。しかも、その効果は、じわじわと会社全体に広がっていきます。
小さな数字だからと、軽く見ない。ここに、経営を強くするヒントが隠れています。
売上を追うより、利益を守るほうが難しい
売上を伸ばすのは、ある意味で分かりやすい仕事です。数を増やせばいい、価格を下げてでも数をさばけばいい。そう考えがちです。
ですが、無理に数を追えば、値引きが増え、経費もかさみます。売上は増えたのに、なぜか手元にお金が残らない。そんなことが、起こります。
粗利率を守る、あるいは上げるというのは、実はもっと地道で、難しい仕事です。ひとつひとつの取引を見直し、無駄なコストを削り、値づけを丁寧に考える。派手さはありませんが、この積み重ねが、会社の体力をつくります。
私自身、数字の重みを知った
創業したころ、私は経理も財務も、一人で担っていました。
営業で走り回りながら、夜には帳簿と向き合う。そのなかで、痛感したことがあります。売上の数字がいくら大きくても、手元にお金が残らなければ、会社は続かない、ということです。
入ってくるお金と、出ていくお金。そのわずかな差に、会社の命運がかかっている。あのころ、数字のひとつひとつが、これほど重いものかと、身をもって知りました。
だからこそ、今、経営者の方には伝えたいのです。売上という大きな数字の陰で、粗利率という小さな数字が、静かに会社を支えている、と。
1%を上げるために、できること
では、粗利率を1%上げるには、どうすればいいのか。特別な魔法は、ありません。
ひとつは、安易な値引きをやめることです。「これくらいなら」と続けてきた値引きが、粗利率を静かに削っていることは、よくあります。
もうひとつは、仕入れや外注のコストを、あらためて見直すことです。長年の付き合いで、なんとなく続いている取引条件のなかに、改善の余地が眠っていることがあります。
そして何より、自社の適正な価格に、自信を持つことです。以前、『資金繰りの弱点は、隠すより「伝え方」で信用に変える』という記事でも触れましたが、伝え方を工夫すれば、価値は正しく伝わります。安売りせずとも選ばれる会社は、価格を丁寧に説明できる会社です。
おわりに
粗利率を1%上げる。言葉にすれば、地味な話です。
ですが、その小さな1%が、一年、二年と積み重なったとき、会社に残るお金は、大きく変わってきます。売上という派手な数字に目を奪われず、利益という足元の数字を、丁寧に見つめる。
華やかではありません。けれど、こうした小さな数字を大切にできる会社こそ、長く続いていく。資金繰りに苦しんだ自分の経験からも、そう強く感じています。
大きな一手より、小さな一歩の積み重ね。それが、会社を確かに変えていくのだと、私は信じています。
粗利率の改善や利益体質づくり、財務戦略についてお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。