「決算書は、税理士さんに任せていますから」。
こう言われると、私は、少しだけ引っかかりを覚えます。もちろん、数字をまとめて、税務申告をする。それは税理士さんの大切な仕事です。けれど、決算書そのものを「終わった話」として扱ってしまうのは、少しもったいないと感じるのです。
決算書は、過去一年の成績表であると同時に、次に何をすべきかを教えてくれる資料でもあります。今日は、そのことについてお話ししたいと思います。
決算書は、答え合わせの道具ではない
多くの経営者にとって、決算書は「無事に終わったかどうか」を確認するものになりがちです。黒字か赤字か。去年より良いか悪いか。もちろん、それも大切な確認です。
けれど、決算書を眺める時間の大半が「答え合わせ」に費やされてしまうと、そこから先の一歩が生まれません。
決算書は、終わった話を確認するための紙ではありません。
次に何を変えるべきかを、静かに問いかけてくる資料なのだと、私は思っています。
数字は、未来に向けた問いを含んでいる
たとえば、粗利率が去年より少し下がっている。この一行だけでも、いくつもの問いが生まれます。
値引きが増えたのか。仕入れ値が上がったのか。それとも、売れ筋の構成が変わったのか。答えは、決算書の中には書かれていません。けれど、問いは、確かにそこにあるのです。
数字そのものよりも、数字が投げかけてくる問いのほうが、経営にとっては大切だと、私は感じています。
その問いを拾い上げて、来期の一手にどうつなげるか。そこにこそ、決算書を読む本当の意味があるのだと思います。
為替の現場で、数字の裏側を見る癖がついた
私は長く、為替の仲介という仕事をしてきました。あの世界では、数字が一瞬で動きます。けれど、動いた数字の裏には、必ず理由がありました。
金利の発言、政治的な出来事、ちょっとした噂。数字だけを見ていては、次の動きは読めません。数字の後ろにある事情まで想像して、はじめて次の判断ができる。そういう仕事のやり方が、私の中に染みついています。
保険の仕事に移ってからも、ITの世界に入ってからも、この癖は変わりませんでした。決算書を前にしたときも、私はまず「この数字の後ろで、何が起きていたのだろう」と考えるようにしています。
以前、「月次決算を経営に活かす方法|数字を「見るだけ」で終わらせない」という記事でも、数字を経営判断や次の行動につなげてこそ意味がある、と書きましたが、財務の資料というのは、過去を写すだけでなく、これから起きることの兆しも映し出しているのです。
おわりに
決算書を「終わった記録」として棚にしまうのか、それとも「次の一手を考えるための材料」として開き直すのか。その違いは、地味に見えて、経営の速度に確実に影響してくると、私は思っています。
数字を読み解くのは、慣れないうちは骨の折れる作業です。けれど、そこにしか、次の打ち手を見つける道はないのだと、私は信じています。
一人で決算書と向き合っていると、どうしても答え合わせで終わってしまいがちです。もしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場目線で、一緒に数字の先を読んでいきたいと思っています。