「うちも、ようやくペーパーレスが進んできました」。
そう話される経営者の方に、私は、こうお聞きすることがあります。「では、その電子化した情報、経営に活かせていますか」と。すると、多くの方が、少し考え込まれます。
紙を減らすこと自体は、良いことです。けれど、そこで満足してしまうのは、もったいない。ペーパーレスの、本当の価値は、実はその「次」にあるのです。今日は、そのことについて、お話ししたいと思います。
紙をなくすことは、ゴールではない
ペーパーレスに取り組む会社の多くが、「紙を減らすこと」を目的にしています。保管場所が減る。探す手間が省ける。印刷代も浮く。たしかに、どれも意味のあることです。
けれど、それだけで終わらせてしまうと、大きなものを見逃します。
ペーパーレスは、ゴールではなく、入り口です。
なぜなら、紙のままでは、情報は「読む」ことしかできません。ところが、電子になった瞬間、情報は「集める」「並べる」「比べる」ことができるようになる。バラバラだった情報が、経営の判断に使える「データ」に変わる。この変化こそが、ペーパーレスの、本当の値打ちなのです。
紙のままでは、数字は動かない
たとえば、売上の記録。注文の伝票。お客様とのやりとり。紙のファイルに綴じられている限り、これらは、ただの記録です。過去を振り返るための、書類にすぎません。
けれど、これが電子になっていれば、話は変わります。月ごとの推移を並べる。去年と比べる。どのお客様が増えているかを見る。紙では膨大な手間がかかる作業が、あっという間にできるようになる。眠っていた記録が、動き出すのです。
以前、『中小企業のデータ活用入門|「数字を見て動く」会社になる方法』という記事でも書きましたが、数字を見て動ける会社は、強い。そして、その前提になるのが、情報が電子で、扱える形になっていることなのです。ペーパーレスは、データ経営の、土台づくりでもあります。
「次に来るもの」は、データ経営
では、ペーパーレスの次に来るものとは、何か。それが、データ経営です。
難しく考える必要はありません。要は、勘や記憶だけに頼らず、電子になった情報を見ながら、判断していく経営のことです。
私は為替仲介の世界にいた頃、目の前の数字や動きから、市場の空気を読んでいました。数字は、正直です。思い込みを、静かに正してくれる。中小企業の経営でも、同じだと思っています。電子になった情報を味方につければ、判断の確かさが、ぐっと増すのです。
大企業のような、大がかりな仕組みは要りません。手元の電子データを、月に一度、並べて眺める。その小さな習慣から、データ経営は始まります。
とはいえ、一気に、を目指さない
ここで、一つ、お伝えしておきたいことがあります。すべてを、一度にやろうとしないことです。
「電子化したのだから、全部データで分析しよう」。意気込むのは良いことですが、欲張りすぎると、たいてい息切れします。まずは、いちばん見たい情報を一つ。それを電子で、見える形にする。うまくいったら、次へ広げる。
私自身、起業したての頃、あれもこれもと抱え込んで、動けなくなった経験があります。物事を動かしてくれたのは、いつも「まず一つ」という、小さな具体でした。データ経営も、同じです。焦らず、一歩ずつ。それが、いちばん確かな進め方です。
おわりに
ペーパーレスは、多くの中小企業が、すでに取り組んでいるテーマです。だからこそ、そこで止まらず、一歩先へ進んでいただきたいと、私は思っています。
紙をなくすこと自体を、目的にしない。電子になった情報を、経営の判断に活かす。そこまで進んで、はじめて、ペーパーレスは本当の価値を発揮します。紙のその先に、データ経営への道は続いているのです。
眠っている電子データを、どう経営に活かせばいいのか。何から手をつければいいのか。一人で考えていると、なかなか見えてこないものです。もしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場目線で、一緒に考えていきたいと思っています。