創業期の失敗をどう受け止めるか|私が起業で学んだ立ち直り方

「あの判断が、間違いだったんですよね」。

創業から二年ほど経った経営者の方が、ぽつりとそう言われたことがあります。声のトーンは、責めるでもなく、言い訳するでもなく、ただ静かでした。けれど、その静かさが、かえって重たく響いたのを覚えています。

創業期に、失敗しない人はいません。それは、たぶん誰もが頭では分かっている。問題は、失敗したあと、自分をどう扱うか、なのだと思います。

今日は、そのことについてお話ししたいと思います。

失敗そのものより、失敗のあとの時間が長い

失敗は、たいてい一瞬です。契約が流れる。読みが外れる。人が離れる。出来事としては、その日のうちに終わっています。

けれど、その後に続く時間のほうが、圧倒的に長い。夜中にふと目が覚めて、あのときああしていればと考える。翌朝、机の前で三十分ほど動けない。そういう時間が、じわじわと積み重なっていきます。

失敗は出来事ですが、落ち込みは状態です。

ここを混ぜて考えてしまうと、話がややこしくなります。出来事は処理できますが、状態は処理できません。状態は、時間をかけて、少しずつ抜けていくものだからです。

だから私は、創業期の失敗については、「どう解決するか」より先に、「どう受け止めるか」を考えたほうがいいと思っています。順番が逆になると、たいてい空回りします。

私も、外れた読みを何度も抱えてきました

偉そうに書いていますが、私自身、失敗の受け止め方が下手な人間でした。

為替仲介の世界にいた頃、相場は一分単位で動いていました。判断が正しかったかどうかは、すぐに結果として返ってくる。あの環境で長く働いていると、失敗を「その場で処理するもの」として扱う癖がつきます。引きずらないことが、プロの条件のように思っていました。

けれど、起業してからは、そうはいきませんでした。

会社を立ち上げたばかりの頃、営業も経理も財務も、全部を一人でやらざるを得ない時期がありました。相場と違って、判断の結果が返ってくるまでに、何ヶ月もかかる。しかも、その結果が良くなかったとき、誰も理由を教えてくれません。自分で仮説を立てて、自分で検証するしかない。

あのときの、宙ぶらりんな感覚は、今でもよく覚えています。

結果が出るまでの時間が長いということは、自分を責める時間も長いということでした。為替の現場で身につけた「切り替えの速さ」は、起業の現場では、あまり役に立たなかったのです。

失敗を、事実と解釈に分けて置く

では、どうしたか。

私が少しずつ覚えたのは、起きたことを、事実と解釈に分けて紙に書く、というごく地味な作業でした。

たとえば、提案が通らなかったとします。事実は、「三月に出した提案が、四月に見送りになった」ということだけです。けれど頭の中では、そこに勝手な解釈がくっついています。自分の実力が足りない。この事業は向いていない。あの業界は無理だ。

解釈は、事実の何倍にも膨らみます。

紙に分けて書いてみると、事実は案外、数行で終わります。残りは全部、自分がつけた意味だったと分かる。それだけで、呼吸が少し楽になります。

これは、精神論というより、経営判断の話でもあります。以前、『感覚を事実に変える。それが経営判断の出発点になる』という記事でも書きましたが、感覚のままにしておくと、良いことも悪いことも、正しく扱えなくなります。落ち込みも同じです。事実に戻すところから、次が始まります。

立ち直るとは、元に戻ることではない

「立ち直る」という言葉には、少し誤解があるように思います。

元気だった頃の自分に戻る、という意味で使われがちですが、実際はそうではありません。失敗する前と後では、見えている景色が違う。戻ろうとしても、戻れないのです。

立ち直るというのは、変わった自分のまま、もう一度動き出すことです。

たしかに、格好はよくありません。自信満々でもないし、確信もない。それでも、朝起きて、電話を一本かける。資料を一枚だけ直す。そのくらいの小さな動きが、状態を少しずつ変えていきます。

要は、気持ちが整ってから動くのではなく、動くことで気持ちが後からついてくる、ということです。順番はいつも、そちらでした。

失敗を、一人で抱え込まない

もうひとつ、大事だと感じていることがあります。

創業期の失敗は、誰にも話せないまま、社長の中だけに溜まっていきやすい。従業員には言えない。家族には心配をかけたくない。取引先には、なおさら言えない。

けれど、話す相手がいないと、解釈はどんどん一人歩きします。

誰かに一度声に出して話すだけで、「あ、思ったより小さい話だったな」と気づくことは、案外多いものです。以前、『その孤独な決断、一人でしなくていい|スタートアップに伴走支援が必要な理由』という記事でも書きましたが、判断そのものより、判断を一人で背負い続けることのほうが、経営者を消耗させます。

相談は、答えをもらうためだけのものではありません。自分の中で膨らんだ解釈を、事実の大きさに戻すためのものでもあるのだと、私は思っています。

おわりに

創業期の失敗は、なくすことはできません。減らすことはできても、ゼロにはならない。だとすれば、上手に失敗する技術より、失敗したあとに立ち上がる技術のほうが、長く効いてくるのだと思います。

事実と解釈を分けて、小さく動き直す。地味で、格好のつかない作業です。でも、私が起業してから今日まで続けてこられたのは、結局この繰り返しがあったからだと、静かにそう思っています。

一人で考えていると、事実より解釈のほうが大きくなってしまうことがあります。もしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場目線で、一緒に考えていきたいと思っています。

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