これまで付き合ってきたお客様とは、まったく違う属性の市場を、新たに開拓する。営業をしていると、ときに、そんな挑戦を求められることがあります。
勝手の分からない世界に、どう入り込んでいけばいいのか。今回は、私が、それまでとはまったく異なる専門性の高い市場を新規開拓したときの経験を、お話ししたいと思います。結論から言えば、鍵を握ったのは「専門家だと思ってもらえるかどうか」でした。
これまでとは、まったく違うお客様だった
もともと、私が扱っていたITインフラは、お客様の情報システム部門に販売するのが一般的でした。けれど、あるとき、「この商品を、別の市場にも売れないか」という話が持ち上がりました。
新たにターゲットとしたのは、研究開発職がメインの市場です。これまでお付き合いしてきた情報システム部門とは、まったく異なる属性のお客様でした。話す言葉も、関心ごとも、仕事の進め方も違う。これまでのやり方が、そのまま通用する相手ではありませんでした。
ちなみに、このときは、まず1年間、新規開発担当として、市場調査と新商品開発に従事しました。情報システム部門向けの既存商品を、この新しい市場向けに作り変えるところからのスタートだったのです。そして新商品が完成したのち、営業に戻り、いよいよ新規開拓に臨むことになりました。
まず、業界の言葉を、徹底的に覚えた
新しい市場に向き合ったとき、私が最初に考えたのは、こういうことでした。
「この業界特有の言葉を、きちんと覚えていかなければ、相手にしてもらえないのではないか」。
専門性の高い世界では、業界特有の用語が、当たり前のように飛び交います。その言葉を理解できない相手に、自分たちの大切な課題を打ち明けようとは思わないでしょう。逆に言えば、その言葉を使いこなせれば、「この人は分かっている」と感じてもらえる。
そこで私は、業界の知識を、書籍やインターネットで徹底的に調べました。業界特有の用語、仕事の流れ、よくある課題。お客様と対等に話せるだけの土台を、訪問の前に、しっかりと作り込んでいったのです。
「この業界、長いんですか」と言われるまでに
準備をしっかりしていったおかげか、ありがたいことに、お客様から「井野さんは、この業界が長いんですか」と言われるほど、その世界の言葉で話せるようになっていました。
正直に打ち明ければ、はじめは、事前の勉強のおかげにすぎません。けれど、面白いもので、2社、3社と回るうちに、状況が変わっていきました。ある会社で聞いた話を、次の会社で話す。そうやって現場で得た生きた情報が、どんどん蓄積されていったのです。
はじめは「勉強した知識」だったものが、いつのまにか「現場で得た、本物の知見」に変わっていく。こうなると、もう付け焼き刃ではありません。お客様にとって、本当に話す価値のある相手になっていったのです。
狭い業界だからこそ、紹介で広がっていった
この市場には、もうひとつ、大きな特徴がありました。それは、業界が「狭い」ということです。
専門性の高いニッチな世界では、横のつながりが密です。「知り合いの知り合いは、知り合い」と言ってもいいほど、皆がどこかでつながっている。だからこそ、「あの人は、この業界に詳しい」という評判は、あっという間に広まっていきました。
やがて私は、業界の集まりの場で、商品を紹介させていただけるまでになりました。一社一社、飛び込みで開拓していたはずが、向こうから声がかかり、紹介で輪が広がっていく。結果として、4〜5年をかけて、8社の新規開拓に成功することができました。
ニッチな市場は、入り込めば広がりが大きい
振り返って、この経験から学んだことは、はっきりしています。
成功の出発点は、最初に、業界の知識を書籍やネットで調べ、事前準備をしっかり行ったことでした。この準備があったからこそ、私は「この業界を熟知した専門家」として評価され、他社への紹介までいただくことができたのです。
ニッチな業界は、入り込むまでが、確かに難しい。けれど、いったん入ってしまえば、その広がりは非常に大きい。狭くて密な世界だからこそ、一度信頼を得れば、紹介が紹介を呼び、思いがけないスピードで輪が広がっていく。これは、専門性の高い市場を攻めるうえで、とても大切な感覚だと感じた経験でした。
おわりに
アプローチが難しい市場ほど、「専門家だと思ってもらえるかどうか」が、勝負を分けます。そして、専門家と思ってもらうための第一歩は、特別な才能ではなく、地道な事前準備です。
相手の世界の言葉を学び、対等に話せる土台を作る。その誠実な準備が、信頼を生み、やがて紹介という大きな広がりにつながっていきます。難しそうに見える市場こそ、丁寧な準備で扉を開ける価値があるのだと、私は考えています。
当社では、社外CFO、DXコンサルティングと並ぶ事業の柱として、営業コンサルティングに力を入れています。新しい市場の開拓や、専門性の高い顧客へのアプローチについて、現場で培った実体験をもとに、一緒に考えていきたいと思っています。新規開拓にお悩みの際は、ぜひ無料相談のお申し込みはこちら。