お客様は、本当に「商品」を買っているのでしょうか。30年間営業をしてきて、私はこう考えるようになりました。お客様が買っているのは、商品そのものではなく、その先にある「価値」だ、と。
この「価値」を理解する鍵が、機能的価値と本質的価値という2つの考え方です。
機能的価値とは
機能的価値とは、商品やサービスが持つ「機能」や「性能」がもたらす価値です。性能の高さ、スペック、価格、納期の早さ――数字や仕様で表せる、目に見えやすい価値だといえます。
たとえばパソコンであれば、処理速度や記憶容量、価格などがこれにあたります。営業の場面でも、つい私たちはこの機能的価値を一生懸命に説明しがちです。「他社より高性能です」「価格が安いです」と。
本質的価値とは
一方の本質的価値とは、その商品を通じてお客様が本当に手に入れたい「結果」や「状態」のことです。
パソコンを買う人が本当に欲しいのは、高い処理速度そのものではなく、「仕事がスムーズに進むこと」「ストレスなく作業できること」かもしれません。お客様は機能を買っているのではなく、その機能がもたらす結果を買っているのです。この「本当に欲しいもの」こそが、本質的価値です。
お客様は「結果」を買っている
有名な言葉に、「ドリルを買う人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」というものがあります。これはまさに、機能的価値と本質的価値の違いを表しています。
お客様が求めているのは、ドリルという道具(機能的価値)ではなく、空けたい穴(本質的価値)です。さらに言えば、その穴を空けて何を実現したいのか――棚を取り付けたい、部屋を快適にしたい――という、もっと奥の目的があります。営業が見るべきなのは、商品の機能の先にある、お客様が本当に実現したいことなのです。
機能ではなく、価値を提案する
本質的価値に目を向けると、営業の役割そのものが変わってきます。商品の機能を説明する「売る営業」から、お客様の実現したいことに応える営業へと、立ち位置が移っていくのです。
これはまさに、商品を「売る」から、お客様の「課題を解決する」へと発想を変えるソリューション営業の考え方そのものです。お客様が本当に欲しい結果は何かを起点に提案を組み立てれば、機能の優劣だけで比較される消耗戦から抜け出すことができます。
本質的価値を見抜くには「聞くこと」
では、お客様の本質的価値をどう見抜けばよいのでしょうか。答えはシンプルで、「聞くこと」です。
「なぜ、それが必要なのですか」「それで、どんな状態を実現したいのですか」。機能の要望の奥にある、本当の目的を尋ねていく。お客様自身も気づいていない本質的価値を一緒に掘り起こせたとき、提案は単なる商品説明から、課題解決へと変わります。機能の説明に終始する営業と、本質的価値に応える営業。同じ商品を扱っていても、お客様の受け止め方はまったく違うものになります。
おわりに
商品の機能や価格で差がつきにくい時代こそ、お客様が本当に買っているものは何かを見極める力が問われます。機能や価格が横並びになれば、最後にお客様が選ぶ決め手は、「人」で選ばれるかどうかにかかってきます。本質的価値に応えようとする姿勢こそが、その「人」としての信頼を育てるのです。
機能的価値だけを語る営業から、本質的価値に応える営業へ。お客様の「本当に欲しいもの」に目を向けるだけで、提案の質も、選ばれる確率も大きく変わります。お客様が買っているのは商品ではなく、その先にある価値である――この視点を、ぜひ持ち続けてほしいと思います。
営業力の強化や提案手法についてのご相談は、無料相談のお申し込みはこちらからどうぞ。