「営業に、財務や会計の知識なんて必要なのか」。そう思う方もいるかもしれません。しかし、数字が読めるようになると、提案の質は確実に変わります。
難しい専門知識をすべて覚える必要はありません。営業が押さえておきたい、最低限の基礎をお伝えします。
「財務会計」と「管理会計」
会計には、大きく分けて2つの種類があります。「財務会計」と「管理会計」です。
財務会計は、株主や取引先、銀行といった社外の関係者に、会社の状況を報告するための会計です。ルールが定められており、決算書や有価証券報告書などの形で公開されます。一方の管理会計は、社内で経営判断をするための会計で、部門別の採算や予算管理など、その会社が必要とする形で自由に運用されます。
営業がまず触れるのは、公開されている財務会計の情報です。お客様が上場企業であれば、その決算情報から経営状況を読み解き、提案のヒントを得ることができます。
基本は「発生主義」
会計を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「発生主義」という考え方です。
発生主義とは、現金の出入りではなく、取引が「発生した」時点で売上や費用を計上する考え方です。つまり、実際にお金を受け取ったかどうかにかかわらず、商品やサービスを提供した時点で売上として記録されます。この「お金の動き」と「売上の計上」がずれる、という点が、次に説明する売掛金や前受金を理解する鍵になります。
「売上」は「現金」ではない
ここで、営業が特に意識しておきたいのが、「売上=現金ではない」ということです。
たとえば、商品を納めて売上が立っても、その代金がまだ入金されていない場合があります。これは「売掛金」と呼ばれ、帳簿上は売上になっていても、現金はまだ会社に入っていません。営業として契約を取り、売上を計上できたとしても、実際の入金を確認するまでが仕事です。入金の確認を怠ると、「売れたのにお金が入らない」という事態になりかねません。売上を立てて終わりではなく、きちんと回収されているかまで意識することが大切です。
「前受金」は「売上」ではない
逆に、お金を先に受け取っても、それがすぐに売上になるとは限りません。
たとえば、年払いや複数年分の料金を一括で受け取った場合。手元には大きな金額が入りますが、その全額がその時点の売上になるわけではありません。サービスを提供する期間に応じて、少しずつ売上として計上していくのが基本です。先に受け取ったお金のうち、まだサービスを提供していない分は「前受金」として扱われます。「お金が入った=売上が立った」と単純に考えると、数字を読み違えてしまうのです。
数字が読めると、提案が変わる
こうした基礎を押さえておくと、お客様の状況がより立体的に見えてきます。
たとえば、お客様にとって「初期費用を一括で払う」のと「分割で払う」のとでは、手元の資金繰りへの影響が大きく異なります。数字が読めれば、相手の資金負担に配慮した提案ができます。実際、提案の数字を読み解くうえでは、利益だけでなくキャッシュフローを中心に見る視点が欠かせません。お金が「いつ」「どれだけ」動くのかを意識した提案は、お客様にとって受け入れやすく、信頼にもつながります。
おわりに
財務・会計の知識は、営業に直接関係ないように見えて、実は提案の質を大きく左右します。数字が読めれば、お客様の事情を深く理解し、相手の立場に立った提案ができるようになります。
すべてを完璧に覚える必要はありません。「売上は現金ではない」「お金が入っても売上とは限らない」――まずはこうした基本を押さえるだけでも、見える景色は変わります。なお、実際の会計処理や税務の判断については、専門家にご確認のうえで進めることをおすすめします。
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