契約や法律のことは、法務や顧問弁護士に任せている。
多くの会社で、そう考えられています。もちろん、専門的な判断は、専門家に委ねるべきです。
ですが、取引のいちばん最初の入口に立っているのは、営業です。その入口で、ほんの小さな見落としがあると、あとで大きなトラブルに、つながることがあります。
営業がすべてを知る必要は、ありません。ただ、「これは危ないかもしれない」と気づける最低限の知識は、身を守る武器になります。
口約束でも、契約は成立してしまう
まず、知っておきたいことがあります。契約は、書面がなくても、口約束だけで成立します。
「じゃあ、それでお願いします」。この一言で、約束が成り立ってしまうことがあるのです。
問題は、後になって「言った」「言わない」で、もめたときです。口約束は、証拠が残りません。どちらの言い分が正しいのか、証明することが、とても難しくなります。
だからこそ、大事な話は、メールや議事録など、形に残しておく。この習慣だけでも、多くのトラブルを、防ぐことができます。
契約書で、営業が特に見るべきところ
契約書のすべてを、営業が読み込む必要は、ありません。ですが、お金と責任にかかわる部分は、目を通しておきたいところです。
いくら払うのか。いつ払うのか。何をもって「仕事が完了した」とするのか。もし問題が起きたとき、誰が、どこまで責任を負うのか。
こうした点があいまいなまま話が進むと、後で必ず、認識のずれが出ます。契約書を交わす前に、自社と相手で理解が一致しているか、確認しておくことが大切です。
少しでも判断に迷う条項があれば、そこで立ち止まる。法務や専門家に確認してから進める。その一手間が、あとの大きな手戻りを、防ぎます。
「これくらい大丈夫」が、いちばん危ない
トラブルの多くは、悪意からではなく、小さな油断から生まれます。
納期を口頭でずらしてしまう。仕様の変更を、記録に残さないまま進めてしまう。「相手も分かっているはず」と、確認を省いてしまう。
その場では、問題になりません。ですが、後で状況が変わったとき、「聞いていない」という話に、なりがちです。
面倒に思えても、決まったことは形に残す。あいまいなことは、その場で確かめる。この地道さが、信頼を守ります。
迷ったら、専門家に確認する
ここまでお伝えしたのは、あくまで最低限の基礎です。個別の契約について、法的な判断が必要なときは、必ず弁護士など専門家に相談してください。
私自身、これまで為替の仲介から生命保険、ITの提案まで、さまざまな契約の現場に立ち会ってきました。強く感じるのは、契約に強い営業ほど、「自分で抱え込まず、早めに確認する」ということです。
知らないことを、恥じる必要はありません。危ないと気づき、確認できることこそが、力です。
おわりに
契約や法務は、営業には縁遠いもの、と思われがちです。
ですが、最初の入口に立つ営業が、最低限の知識を持っているかどうかで、トラブルの起きやすさは、大きく変わります。
難しい専門知識ではなく、「気づける目」と「確かめる習慣」。それが、自分と会社を守る、いちばんの備えだと、思っています。