既存顧客を深掘りする営業|定期的な情報提供が信頼を生む

営業というと、どうしても「新規開拓」に目が向きがちです。新しいお客様を、いかに増やすか。もちろん、それも大切です。

けれど、私が30年の営業を通じて実感しているのは、安定した成果を生む土台は、むしろ「既存のお客様」にある、ということです。今回は、すでにお付き合いのあるお客様を深掘りする営業について、お話ししたいと思います。

新規開拓よりも、既存顧客のほうが「効率が良い」

そもそも、新規のお客様を一から開拓するのは、大変な労力がかかります。知らない相手に連絡を取り、信頼を築き、ようやく一つの契約に至る。その道のりは、決して平坦ではありません。

一方、既存のお客様は、すでに一度、自分たちを信頼して取引してくださった相手です。土台となる信頼関係が、すでにある。だからこそ、新たな提案も、ゼロから始めるより、はるかに受け入れていただきやすい。

よく「新規開拓のコストは、既存顧客の維持コストの何倍もかかる」と言われます。実際、私の経験でも、安定して成果を出している営業ほど、既存のお客様を大切にし、深く付き合っていました。新規も大事ですが、足元の既存顧客を深掘りすることの価値を、見落としてはいけません。

「売り込み」ではなく、「情報提供」で接点を持つ

では、既存のお客様と、どう関係を深めていけばよいのか。

ここで大切なのが、「売り込むために連絡しない」ということです。用があるとき、売りたいものがあるときだけ連絡してくる営業を、お客様は敏感に見抜きます。「この人は、結局、売りたいだけなんだな」と感じれば、心の距離は、かえって遠くなってしまいます。

私が意識してきたのは、売り込みではなく、「役に立つ情報を、定期的に届ける」ことでした。お客様の業界に関わる新しい動き、知っておくと得をする制度の変更、他社の参考になりそうな事例。お客様にとって価値のある情報を、こまめにお持ちする。

こうした情報提供を続けていると、お客様にとって、私は「売り込みに来る人」ではなく、「役に立つ情報をくれる人」になっていきます。この立ち位置の違いが、後々、大きな差を生むのです。

定期的な接点が、「思い出してもらえる」状態をつくる

定期的に情報を届けることには、もうひとつ、大きな効果があります。それは、お客様の中で「忘れられない存在」になれることです。

このことを、強く実感した出来事があります。

かつて私が担当していた、あるお客様の話です。私が新規で獲得したお客様だったので、思い入れもありました。ところが、その後、私から別の担当者に引き継いだところ、どうやら、その担当者とはそりが合わなかったようで、やがて解約になってしまったのです。

ところが、解約から数年が経ったある日のこと。そのお客様から、私あてに、直接ご連絡をいただきました。「制度が変更になるので、最新の情報がほしい」と。

担当していた頃、私はそのお客様と毎月のように定例の場を持ち、いつも情報提供を続けていました。だからこそ、いざ情報が必要になったとき、「井野さんなら知っているだろう」と、私のことを思い出して連絡をくださったのです。

結果として、そのお客様との取引が再開することはありませんでした。それでも、私が続けてきた情報提供を、お客様はずっと覚えていてくださった。これは、私にとって、とても嬉しい出来事でした。

どれだけ良い関係を築いても、しばらく連絡を取らなければ、お客様の記憶は薄れていきます。けれど、普段から誠実に情報を届け続けていれば、たとえ一度関係が途切れても、いざというときに、真っ先に思い出してもらえる。定期的な情報提供は、その瞬間のための、確かな種まきなのだと、改めて感じた経験でした。

深掘りは、「もう一つの困りごと」を聞くことから

定期的な接点を持ち続けていると、お客様は、自然と、別の困りごとも打ち明けてくださるようになります。

最初の取引とは関係のない、新たな課題。あるいは、別の部署が抱えている悩み。信頼関係ができているからこそ、「ちょっと、こんなことで困っているんだけど」と、相談していただけるのです。

そのすべてに、自分が応えられるとは限りません。それでも、その中のいくつかは、自社で解決できるものです。こうして、一人のお客様との関係が、一つの取引から、二つ、三つと広がっていく。これが、既存顧客の「深掘り」です。新規を増やさなくても、一社一社との関係を深めることで、成果は着実に積み上がっていきます。

おわりに

既存顧客を深掘りする営業の本質は、特別なテクニックではありません。売り込みではなく、役に立つ情報を、誠実に、定期的に届け続ける。その地道な積み重ねが、信頼を生み、やがて新たな仕事へとつながっていきます。

新規開拓に追われるあまり、すでにお付き合いのあるお客様との関係が、おろそかになっていないか。一度、立ち止まって振り返ってみる価値は、十分にあると思います。足元にこそ、大きな可能性が眠っているのです。

当社では、社外CFO、DXコンサルティングと並ぶ事業の柱として、営業コンサルティングに力を入れています。既存顧客との関係を深め、安定した成果につなげる営業のあり方について、現場で培った実体験をもとに、一緒に考えていきたいと思っています。営業活動にお悩みの際は、ぜひ無料相談のお申し込みはこちら

お知らせ
最近の記事
人気の記事
  1. 代表によるnoteを開設しました

  2. 2026年度も東京商工会議所に登録いたしました

  3. THE JSSA TOKYO Meetup Vol.63に参加します

  4. ホームページをリニューアルしました

  1. スタートアップの壁打ち相手の選び方|相談できる支援者の見つけ方

  2. 2025年の崖とは?レガシーシステム刷新の進め方をわかりやすく

  3. なぜスタートアップは失敗するのか|起業が続かない3つの壁と乗り越え方

  4. DX人材がいない中小企業はどうする?外部活用という選択肢

  5. ソリューション営業とは何か|「売る」から「課題を解決する」へ

  6. 社外CFO導入の流れと進め方|相談から契約までの手順を解説

  7. 創業融資の審査に通るコツ|日本政策金融公庫を活用する方法

  8. 創業期に使える補助金・助成金まとめ|返済不要の資金を活かす

  9. 社外CFOに依頼できる業務とは?具体的な支援内容を一覧で解説

  10. 融資・投資で通る事業計画書の作り方|創業期に押さえるべき6つの要素

  1. 社外CFOの費用相場はいくら?料金体系と内訳をわかりやすく解説

  2. DXは何から始めるべき?中小企業のための失敗しない最初の一歩

  3. DXは「伴走型コンサルティング」で成功する|従来型との違いと中小企業に向く理由

  4. 資金調達で銀行交渉を有利に進める5つのポイント|中小企業の経営者向け

  5. 営業経験は、経営にどう活きるのか|現場で培った力の使い道

  6. セーフティネット保証5号とは?中東情勢で583業種が指定|中小企業の資金繰り対策

  7. 社外CFOと顧問税理士・常勤CFOの違いとは?役割を比較して解説

  8. 設備投資の意思決定|投資すべきかを数字で判断する方法

  9. 中小企業のための生成AI活用入門|業務で使える具体例と始め方

  10. 業務の属人化を解消する方法|「あの人しかできない」をなくす

関連記事

目次