スピードが信頼を生む|為替の現場で学んだ「即レス」の力

「すぐに返す」。たったそれだけのことが、営業では大きな武器になります。

私は若い頃、為替の現場で「スピードが信頼を生む」ということを、身をもって学びました。

一瞬を争う、為替の世界

私はドル資金取引を担当し、外国銀行を数行受け持っていました。

外国銀行の担当者は、ほとんどが歩合制の世界です。成績によって給与が決まり、成績が悪ければ雇用すら危うい。だからこそ、彼らは取引する仲介会社を厳しく選びます。

当時、仲介会社は8社ありましたが、各担当者が実際に使うのは1社から3社程度。場合によっては、手数料の安い海外の仲介業者と直接やり取りすることもありました。それほど、シビアに相手を選ぶ世界だったのです。

そんな中で私は、担当する2行から「メインで使うからね」と言われていました。接待の席でその理由を尋ねると、答えは明快でした。「レスポンスが早く、かつ情報が正確だから」。

この世界では、自分の担当行がマーケットに出ていれば、自社にオーダーが来なくてもわかります。それでもお客様は、わざわざ「今日は使わないよ」「他社にも少し手数料を落とさないとね」と、ひと言連絡をくれました。

使わない日にまで連絡をくれる――。それは、こちらが日頃から「早く、正確に」を積み重ねてきたからこそ生まれた関係だったのだと思います。

なぜ、スピードは信頼になるのか

速さそのものが、相手への誠意の表れだからです。

すぐに返事が来るということは、「あなたを優先しています」という無言のメッセージになります。逆に、返事が遅ければ、たとえ内容が丁寧でも「後回しにされた」という印象を与えてしまいます。

特に、判断にスピードが求められる相手ほど、待たされること自体が大きなストレスになります。早く返すというだけで、相手の不安を取り除き、安心して任せられる相手だと感じてもらえるのです。

即レスは、営業でこそ効く

為替の現場で学んだこの感覚は、その後どの業界の営業に移っても変わりませんでした。

「すぐに調べてご連絡します」と言ってその日のうちに返す。「明日までに」と言われたものを当日中に返す。こうした小さな積み重ねが、「この人は早い」「この人は動いてくれる」という評価につながります。これは、売れる営業と売れない営業の違いとして私が長年感じてきたことにも通じます。約束を守り、相手を待たせない――その誠実さの積み重ねが、最後に「人」で選ばれる差を生むのです。

商品やサービスで差がつきにくい時代こそ、レスポンスの速さは数少ない明確な差別化要因になります。同じ提案内容でも、先に・速く動いた営業が選ばれるのです。

速さは、誠実さの表れ

もちろん、速ければ何でもよいわけではありません。為替の現場で評価されたのも、「早く」だけでなく「正確に」が伴っていたからです。

急いで返した結果、内容が雑であったり、間違っていたりすれば、かえって信頼を失います。大切なのは、正確さを保ったうえで、可能な限り早く返すこと。すぐに答えが出せないときも、「確認して、いつまでにご連絡します」と即座に一報を入れる。これだけで、相手の受ける印象は大きく変わります。

スピードとは、相手を待たせないという誠実さの表れなのです。

おわりに

「すぐに返す」というのは、誰にでもできることです。特別な才能も、大きな投資も必要ありません。それでいて、信頼を積み重ねる効果は非常に大きい。

使わない日にまで連絡をくれたお客様のことを、私は今でも忘れません。スピードと正確さの積み重ねが、それだけの関係を築いてくれたのだと思います。

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