「営業は足で稼ぐもの」。そう言われた時代が、確かにありました。
しかし私は、20年以上にわたってITを使い続けてきた営業マンとして、こう考えています。営業にこそ、デジタルの力が活きる、と。
デジタルは、営業の敵ではない
インターネットやスマートフォンの普及で、お客様は自分で情報を集められるようになりました。営業がわざわざ訪問しなくても、必要な情報は手に入ります。これを「営業の出番が減った」と捉える人もいます。実際、営業の役割が「情報の仕入先」から「課題解決」へと変わってきたのは、この情報環境の変化が大きな背景にあります。
しかし、見方を変えれば、デジタルは営業を強くする道具でもあります。情報収集も、顧客管理も、提案資料の作成も、かつては膨大な時間がかかっていました。それらをデジタルで効率化できれば、本来最も大切な「お客様と向き合う時間」を増やせるのです。
デジタルで「準備の質」が変わる
商談の前に、お客様の業界動向や経営状況を調べる。上場企業であれば、公開されている資料から課題を読み解く。こうした事前準備は、かつては足を運んで資料を集める必要がありました。
今は、検索ひとつで多くの情報にたどり着けます。準備にかける時間が短くなった分、その情報をどう読み解き、どう提案に結びつけるかに集中できます。デジタルは、準備の「量」だけでなく「質」も引き上げてくれるのです。
デジタルで「プロセスを管理する」
私がデジタルの力を強く実感したのは、営業未経験者を含む混成チームで、短期間の必達目標に挑んだときのことです。未経験メンバーと挑んだこの営業現場では、いかに営業管理を簡素化し、確実に目標件数を達成するかが大きな課題でした。
このとき利用したのが、創業間もなかった株式会社セールスフォース・ドットコム(現:株式会社セールスフォース・ジャパン)のSFA(営業支援システム)でした。営業管理をできるだけ簡素化したい、そして確実に目標件数を達成するためにプロセスを管理したい――そう考えて導入を決めたのです。
当時、SFAという仕組み自体がまだ世の中でメジャーではなく、それを使うこと自体が一つの挑戦でした。それでも、有償のトレーニングを受けてみて「これは使える」と確信しました。誰がどの案件のどの段階にいるのか、次に何をすべきなのかが一目でわかる。経験の浅いメンバーでも、やるべきことが明確になり、迷わず動けるようになりました。
結果や勘に頼るのではなく、成約までのプロセスを数字で管理する。デジタルは、その「見える化」を可能にし、チーム全体を必達目標へと導く土台になってくれたのです。
それでも、最後は「人」
ここで誤解してはいけないのは、デジタルがすべてを解決するわけではない、ということです。
どれだけツールが進化しても、お客様の困りごとに耳を傾け、信頼を積み重ねるのは「人」の仕事です。商品やサービスで差がつきにくい時代には、最後は「人」で選ばれるかどうかが決め手になります。デジタルは、その人の仕事をより効果的にするための道具にすぎません。道具に振り回されるのではなく、道具を使いこなす。その意識が、これからの営業には欠かせません。
おわりに
デジタルを敬遠する営業と、味方につける営業。同じ商品を扱っていても、その差は年々大きくなっていきます。
20年以上ITを使い続けてきた私が確信しているのは、デジタルは営業の価値を奪うのではなく、磨くものだということです。デジタルで効率化し、生まれた時間をお客様に向ける。それが、これからの営業のあるべき姿だと考えています。
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